その4)ひきつけ(熱性痙攣) |
ひきつけを起こしたとき、家庭でできる手当はほとんどありません。たいていは2~3分以内に治まりますので、衣服をゆるめて静かに寝かせておくだけです。
昔は患児が舌を噛まないように、口に何かを噛ませることになっておりましたが、現在はそれはしない方が良いことになっております。ひきつけを起こしますと殆どみんな歯を食いしばってしまいますので、舌を噛む心配はありません。
しかし初めて子供のひきつけを経験するお母さんの驚きと恐怖はたいへんなものだろうと思います。ほとんどのお母さん方は慌ててしまわれるでしょう。しかしこんなときにお母さんに慌てられては困るのです。子供のためにも落ち着いてもらわなければなりません。
お母さんが慌てないためには、ひきつけ(熱性痙攣)とはどういうものなのかを良く理解しておく必要があります。どういうもので、どうすれば良いかを知っていれば落ち着いて対処することができます。
ひきつけの発症頻度は国や人種によって少し差があり、ヨーロッパでは2~3%台、黒人は4%台にたいし、日本ではやや高くて8~10%といわれております。10人子供がいればそのなかの1人はひきつけを起こすと言うことです。
性別では5才未満では男のほうがやや多いのですが、6 才以降では差は無いと言われております。初めてひきつけを起こす年齢は1才が一番多く、ついで2才、3才、0才の順になっております。
ひきつけを起こさなくなるまで何回くらい起こすかと言いますと、1回の人が62 %、2回の人が23%、3回以上の人が15%となっています。そしてほとんどの人が6~7才頃までには、熱がでてもひきつけを起こさなくなって行くようです。
つまり自然に治って行くと言うことです。 ひきつけ(熱性痙攣)の症状は体温が急に上がり、38度5分を越えるときに起こりやすく、発作のほとんどは全身性のけいれんです。発作中は意識がないのが普通です。
けいれんは普通は2~3分で、良くても5分以内に治まります。もし15分以上つづくようでしたら、普通の熱性けいれん以外の病気も考える必要があります。
ひきつけを起こしたときに、あわてて救急車を呼んでも、救急車が来る頃にはけいれんは治まっておりますので、救急車を呼ぶ必要はありません。もしお子さんが熱性けいれんを起こしたときは、衣服を緩めて静かに寝せておき、けいれんが治まってからかかりつけの小児科医につれていってください。
熱性けいれんと似たような症状で、けいれんでは無いものがふたつあります。ひとつは悪寒(おかん)といって、急激に熱が上がるときにみられる、手足や唇、あるいは全身の細かい震えです。このとき顔色や唇の色が悪くなることもあります。
熱性けいれんと違うところは、・始まりと終わりがはっきりしない、・意識がある、・呼吸がけいれんのために抑制されないと言ったところです。意識があるかどうかは、名前を聞いたり、手足を動かすよう言ってみればわかります。
もうひとつは高熱せん妄といって、高熱のときに見られることのある意識障害です。これは恐怖や不安、失見当識(いまどこにいるのか分からない)、幻覚(ないものが見える)などを起こす症状です。これの熱性けいれんとの違いは、・始まりと終わりがはっきりしない、・体温が上がった後の高熱時(39度以上)に起こしやすい、・精神的興奮が主体である、・呼吸のけいれんによる抑制はないなどです。
さて治療ですが、前述しましたように6割以上の人が1回の発作で治ってしまいますので、熱性けいれんにたいする治療は必要ありません。
2回以上発作を起こしたお子さんにたいしては、熱が出始めたときにけいれん止めの座薬を使って発作を予防することが出来ますので、あらかじめかかりつけの小児科の先生から座薬をもらつておいて下さい。
その際座薬の使い方をよく聞いて、間違えないように使って下さい。けいれん止めの座薬を使ったあと、熱さましの座薬を使うときは、少なくとも30分以上は間をあけて下さい。熱さましの座薬を使うと、ひきつけを起こすと思っている人がいるようですが、そんなことはありません。
熱性けいれんは熱の出始めに起こすことが多いので、たまたま熱さましの座薬を使ったタイミングと合ってしまうことは充分考えられます。しかし熱さましの座薬を使ったから、ひきつけを起こしたと言うことではありません。